拝啓
昨日の千秋楽を無事に終え、きょうからは急に寒くなりましたね。
4月末の顔合わせからはじまり、きょうまで大変お世話になりました。
はじめてお会いしたときは、正直言って、あなたをとても遠い存在に感じていました。
ところが、舞台稽古の後半になるにつれ、あなたはわたしのなかに、そしてわたしはあなたのなかにもいるのだということがわかりました。
ひとの言葉や感情にとても敏感になり、喜怒哀楽がいつも以上に激しくなったり、それが抑えられなくなって溢れたり、また、眠れない日々が永遠と続きました。
あなたは、とても人間らしい。
ただ、本当の愛というものを、知らなかったのかもしれない・・・
少しだけ似ていて、でも、わたしとは全く違うあなた。
きょうで、お別れです。
本日を持ちまして、わたくし藤岡麻美とアビゲイル・ウィリアムズは、決別を宣言いたします。
もしも、いつかまた再会するときが来るとしたら(ないとは思いますがw)、もっともっと奥行きのあるあなたを演じられるように、きょうからまたいろいろなことに立ち向かい、立ち止まり、考え、自分を磨きながら、歩いていきたいと思います。
あなたと出会えてよかった。
本当にありがとうございました。
それでは、お元気で!
敬具
2010.9.23
藤岡麻美
☆
「るつぼ」より、撮影:岡見文克氏
アビゲイルとの出会い、そして別れ。このことがまた新たなる藤岡さんを生み出したのでしょうね。
昨日の舞台の後、私は考え思いました。一段上がった舞台と言う名のところで演じている皆さん。
そこは私にとっては演じていると言う世界ではありませんでした。まさにそのものの世界だったのです。
前にも少し書き込みましたが私も一時役者を目指した者です。最近再びこの世界に戻ろうかと思った直後の出来事でした。皆さんの舞台を観て「自分にあそこまでできるのか?」そんな疑念が浮かびました。でも今は、「このくらいで迷うようなら自分にはその資格はない。」そう思っています。本当に復帰するかはまだ決めかねていますが
今より確実に一歩は進みたいです。
長くなってしまい、しかも自分のことばかり書きすみませんでした。出演者の皆様と藤岡さんの演技には大変感銘を受けたことをこの場を借りて厚くお礼申し上げます。
アビゲイルは、麻美ちゃんのかなり深い所に入り込んでいたようだね。
大きな目を剥き出しにして罵ったり、金切り声を上げたり、愛する男を激しく求めたりする姿はお芝居の中とは言え、引き込まれてしまうものがありました。
それだけにあなたの実生活にもアビゲイルは顔を出したようですが、あなたはあなたが気づいているとおり、愛されている。
時には私が妬いてしまうほど愛されている。
深い深い愛情の中にあなたはいるのだと、アビゲイルを演じるあなたを見て、改めて実感しました。
今回のアビゲイルとの束の間出会い(あなたにとっては長いものだったかも知れませんが…)は『表現者藤岡麻美』にとって大きな大きな財産になるのではないかと考えております。
今はしっかりと心と体を休めて、また、私たちをドキドキさせてくださいな。
…って、もう次に動いているのなら、ついていきますよ!